「月は45°移動していた」

夏の夜は空気が湿っていていい匂いがする。

でもさ、考えてもみてよ、
夜中の12時に空を見上げてるとするでしょ、
その、
たった4時間後には夜が明けてるんだよ。
明るいんだぜ。

今日あなたに似ている人を見たよ

肘から先の白さと線の細さ、腕時計、
首筋の耳へのつながり、
目にはいった時はっとした

あなたは相当綺麗な人だったのね


2008.

「未題」

表を見せるも
裏を見せるもご自由に

言い訳するも
しないもご自由に


必要な説明だと思ったら
例えカッコ悪くても

話すも
話さないもご自由に

結局どちらでもいいのね


2008.

「かち」

「あの人は私を万年筆かなにかだと思っているのよ。
ー
でも、世の中には、万年筆を人と同じくらい大切に愛する人も居るかもしれないではないか。」
というようなことを、よしもとばななが作品中で言っていたことがある。

そして、先日TVで知った、アダム・スミスの
「価値には二つある。
ひとつはダイヤモンドなどの『交換価値』、
もうひとつは水などの『使用価値』。」


近頃、なーんか引っかかるのだ。
脇腹辺りがちくちくしている。


2008.

「未題」

3キロちょっとの新しい命を抱っこしました
軽かった
可愛かった
自分の手がこんなに大きいものかと思った
小さな小さな、もひとつおまけに、とても小さな丸まり

彼女はまだ見えていないらしい瞳でじっとこちらを見つめていました

お風呂で気持ち良さそうにフルフルしていました

お姉ちゃんがオムツをつけてあげました

会った瞬間、眠りの中で笑っていました。何度も、何度も！！なにみてたの？
あれはずっと忘れないようにしよう



2008.

「日焼け止めもうやめていいかしら」

ピンでデコ出し
髪耳にかけ
洗顔す

しろいかおに
はっきりくっきりシミ

こんなに色が際立つとは。
知らなかったでぇ〜

あまりに目立ってもう降参

次回はシミ付きでお会いしましょう



2008.

「恵みの夜」

ようこそ
こちらへ

あなたが来るのを
みんなでずっと
待ってたんだよ

昨日は温かい世界に居て
逢えなかったのに
いまは
この世界に居るんだね

待ってたよ

待ってたよ

いつ来るかと
待ってたんだよ



2008.


＊最後の4行は10代終わりにライブで聴いたアマチュアバンド”無人島”の歌詞。
彼らはいま何をしているのだろう。

『未題』

『ブルベリー』の映画を
高校時代のバイトになぞらえていえば、
わたしは午前11時に焼き上がった
焦げもバターも少ない午後8時半閉店間際の白いフランスパン。
ただ食いのバイトさえ持ち帰らないしなしなのフランスパン。

『ダージリン急行』なら
不細工な黒縁眼鏡のライム娘。
クレイジーに付き合って、ハイサヨナラ。

『さくらん』に倣えば、
わたしも見に行ってこよう。
町人の格好をして
どんな鬼か見てこよう。


2008.

「香水瓶を砕いた」

和紙に馴染んだ香水も

和紙に空気に消えてゆく


必死で吸い込んでも


でも憶えたよ
街で逢っても振り向ける




2008.

「小さい花」

あんたなにをしているの

出ちゃったね

待ってたものが遂にきちゃったね

よかったね

あんた無償の愛もてるの

そんな生活耐えられるの

背負いきれるの


でも観てしまったね

気づいてしまったね


あんた
どうするの



2008.

「大浴場」

風呂屋の鏡で図らず自分を見る

目が合う

うつむき、目を瞑っている

顔を洗いながら
髪を洗いながら

目を瞑って
力なく首を振る

座っているのに
ひざまづきそう

それでまた首を横に振る

目を瞑ったまま



2008.