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~日常を離れてつくったものたち~ 創作文・写真・絵
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「5月17日」

デュビュッフェ

赤いニコニコマーク

バカにしたシマウマ

垂れる水

Biork(ビョーク)

ピンクは日射しの色

ヒラメのえんがわ

カウンター

何年前?

引き出し



1998.5.17
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「幸福な日曜日」

目が覚めるまでまって

暑くて汗びっしょりだけど

家の中を行き交う母親の足音

毛布のやわらかさに頬をすりよせ

子どものように丸くなる

そんな幸福な日曜日が存在していること



1998.6
「ルネ小平」


隣のベンチに座った中年女性。
だっぽり大きなTシャツに、これまた大きなお尻のズボン。

後れ毛で少し乱れた髪のまま、
立て続けに煙草を吸う。

決して清潔でない感じ。
ふてぶてしい感じ。

しかし、
講演会がはじまると。。。

この女性、手話の同時通訳者として舞台に立った。

綺麗に結い直した三つ編み。
明るい化粧に、きっちりとスーツ。

とっても表情豊かに手を動かした。

穏やかな雰囲気のまま、講演の間中、流暢に動く手。

そのギャップ。

決めつけてしまうことの危うさ。



1998.7
「マスミツさん」

下がり眉。
目が開いているのかわからない。

時間が止まっていることが多い。
とても多い。
フと見ると、動作の途中で止まってる。

夜ほとんど眠っていない。
黄色いライトをつけたまま、簡易テーブルの前に坐り、うつらうつら。
もしくは、ビニール袋をずっとがさがさやっている。

体重が38.5kgしかない。
服を6枚着ている。

乱れた髪を櫛でまとめ直して留める仕草が美しく、
繰り返してきた永い年月を思い起こさせる。

「よっこいしょ〜のしょっ」が口癖。

点滴を1日に7回していた。
ご飯はあまり食べない。

「マスミツさんごめんね、朝食用のイチゴジャムもうなかった。」、と言うと、
「いいよいいよ。」と言った。

少し困ったような下がり眉。
深い考え事をしているような真夜中のあの表情。

看護婦さんの人気者。



1998.7
「陽子」


寝くじいた首

腫れたまぶた

イタイの何の



ブサイク眼鏡は視界遮る。

膝丈スカートにワイシャツすそ入れ、

真っ黒い髪の毛は自然に乾いてごわごわカール、

中途半端なベージュの靴下、


スニーカー。

ズリ落ち眼鏡を3回落とす。





2006.10.3
「夢十夜 のもう一夜」

朝、目が醒めると
白い光がレースのカーテン越しに私の布団にも届いていた。

水色のポットに熱いお湯を沸かして朝一番のお茶を飲んだ。
昨日アイロンをかけたシャツを着た。
冷めたアイロン台をいつもの場所へしまった。
おととい観た映画のパンフレットの空色がとてもきれいだった。

奥歯が増々、痛む。

3時間も眠っていないのに、鏡の中の私は真っ白い透き通るような肌をしていた。



会社へ着くと早速一日費やしても終わらない量の仕事を任された。

ほとんど話さず、黙々と仕事を続けた。
その割に暇そうな、周りの席の同僚の囁き声が耳障りで、大きなため息をいちいちつかなくてはやってられない程イラついていた。
でも、
我慢を重ねた末に行ったトイレの鏡に映る私の瞳は、真っ黒で、井戸の底のように深く澄んでいた。

やっと仕事の目処がついたので閉店間際の定食屋へ駆け込んだ。

もう肉じゃが定食しかないと言われて、
おいおい、夕食ぐらい好きなもの食べたかったのに、、、と泣きべそをかいた。
冷えかけたご飯を口に運びながら眠くて、眠くて、何度も目をこする。
眠い上にへとへとで、油でテカテカだろうと思っていた肌の触り心地は、まるで絹のそれのようになめらかで、赤ん坊のおしりのようだった。



終電も間に合わずタクシーで帰った我が家には、
幼なじみの友達が来ていた。
少し寒そうにドアの前にしゃがみ、私の帰りを待っていた。

私は心が温かくなって、心からその友人を歓迎した。

しかし、上がって10分も経たないうちに小さな口喧嘩が始まり、過去最大の近所迷惑な大げんかになり、迷うことなく絶交した。



ただでさえ疲れているのに、そのおかげで、4時になろうとしているのに全く眠くならない。
冷たい水を飲みに立った静まりかえったキッチン。

そこの手鏡に映った私の顔は穏やかだった。
大好きな人から、たった今愛を告白されたかのような、晴れ晴れとしてそしてどこか照れくさそうな、何ともいえないいい表情をしていた。
長年悩みの種だったにきびや吹き出物もきれいに無くなっていた。

次の朝、
心が海のように果てしなく、次第に色がなくなってゆくのを感じた。
どの鉱物よりも純度が高くて、南国の甘いフルーツのような香りがした。

「ああ、もう死ぬのだったのか」

私はその時初めて知った。



1997.8.23
「縁(ふち)」


「弱い子は殺してしまいましょう。
 弱い子は殺してしまいましょう。」

そう言いながら毎晩、
頭巾をで顔を覆った背の高い集団が道を通り過ぎる。

いつから始ったのか知らない。

その行列がどこから始まりどこへ帰るのか、知らない。

大人も子供も、
心の中でうずくまっている「子ども」を
知らないうちに天秤にかけられる。

「死んでしまいなさい。
 死んでしまいなさい。」

でも、
本当は、
誰も殺されないことをわたし達は知っている。
誰も死なないことも。

それでも、
毎晩毎晩、頭巾にくるまった背高たちは近所を徘徊する。


1997.11.23
「景色」

アパートのいちばん左の部屋の住人の、同居人が変わった。
木々が生い茂る大家の庭の、向こうに見える人影が変わった。

いつも1人だ。
2人で住んでいるのにたった1人のように心もとなく動いている。

部屋の戸を閉めると、平気で裸で歩いている。
色気とかそういうものは全くなく、だらしなく裸。

ほとんど家にいないのだが、居る時は
夕ご飯を窓辺で食べている。
朝ご飯みたいなものを食べている。
手を合わせご馳走さまと言っている。

いつもわらっている。
心もとなさそうに。

、かと思うと、
何かを見据えるようにじっと真剣な表情になっている。

辛そうで、
手を出したくなる。
滞っていて。

でも昨日からの夏の、
泳ぐように進む雲を見て、
東京の、
少し薄めの青空を見て、
何か少し変わった?

そして今日、空にかかる大きな虹の橋を見上げていた。
その顔。
その心。


2002.7.8
「無題」

「この頬の肉が嫌なの。」
、と女は少し引っ張って見せた。
 
男は女の眼を見ながらその肉をゆっくり引っ張った。

伸びるところまで伸ばそうとした。

女の顔は半魚人のようになっていった。
けれど、大人しくしていた。

限界まで伸びると、
男はそのまましばらく引っぱり続けた。

2人の眼は合ったまま。

1997.
「手放しましょう」

手放しましょう

手放しましょう

余計な鎧はもう脱ぎ捨てましょう

立ちましょう

立ちましょう

あなたが主人公であることを思い出しましょう

余計な、計算や哀しみや孤独感はいりません

そんななんのたしにもならないもの
こちらから棄ててしまいましょう


2006.9.23
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