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~日常を離れてつくったものたち~ 創作文・写真・絵
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「夢十夜 のもう一夜」

朝、目が醒めると
白い光がレースのカーテン越しに私の布団にも届いていた。

水色のポットに熱いお湯を沸かして朝一番のお茶を飲んだ。
昨日アイロンをかけたシャツを着た。
冷めたアイロン台をいつもの場所へしまった。
おととい観た映画のパンフレットの空色がとてもきれいだった。

奥歯が増々、痛む。

3時間も眠っていないのに、鏡の中の私は真っ白い透き通るような肌をしていた。



会社へ着くと早速一日費やしても終わらない量の仕事を任された。

ほとんど話さず、黙々と仕事を続けた。
その割に暇そうな、周りの席の同僚の囁き声が耳障りで、大きなため息をいちいちつかなくてはやってられない程イラついていた。
でも、
我慢を重ねた末に行ったトイレの鏡に映る私の瞳は、真っ黒で、井戸の底のように深く澄んでいた。

やっと仕事の目処がついたので閉店間際の定食屋へ駆け込んだ。

もう肉じゃが定食しかないと言われて、
おいおい、夕食ぐらい好きなもの食べたかったのに、、、と泣きべそをかいた。
冷えかけたご飯を口に運びながら眠くて、眠くて、何度も目をこする。
眠い上にへとへとで、油でテカテカだろうと思っていた肌の触り心地は、まるで絹のそれのようになめらかで、赤ん坊のおしりのようだった。



終電も間に合わずタクシーで帰った我が家には、
幼なじみの友達が来ていた。
少し寒そうにドアの前にしゃがみ、私の帰りを待っていた。

私は心が温かくなって、心からその友人を歓迎した。

しかし、上がって10分も経たないうちに小さな口喧嘩が始まり、過去最大の近所迷惑な大げんかになり、迷うことなく絶交した。



ただでさえ疲れているのに、そのおかげで、4時になろうとしているのに全く眠くならない。
冷たい水を飲みに立った静まりかえったキッチン。

そこの手鏡に映った私の顔は穏やかだった。
大好きな人から、たった今愛を告白されたかのような、晴れ晴れとしてそしてどこか照れくさそうな、何ともいえないいい表情をしていた。
長年悩みの種だったにきびや吹き出物もきれいに無くなっていた。

次の朝、
心が海のように果てしなく、次第に色がなくなってゆくのを感じた。
どの鉱物よりも純度が高くて、南国の甘いフルーツのような香りがした。

「ああ、もう死ぬのだったのか」

私はその時初めて知った。



1997.8.23
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