「恵みの夜」

ようこそ
こちらへ

あなたが来るのを
みんなでずっと
待ってたんだよ

昨日は温かい世界に居て
逢えなかったのに
いまは
この世界に居るんだね

待ってたよ

待ってたよ

いつ来るかと
待ってたんだよ



2008.


＊最後の4行は10代終わりにライブで聴いたアマチュアバンド”無人島”の歌詞。
彼らはいま何をしているのだろう。

『未題』

『ブルベリー』の映画を
高校時代のバイトになぞらえていえば、
わたしは午前11時に焼き上がった
焦げもバターも少ない午後8時半閉店間際の白いフランスパン。
ただ食いのバイトさえ持ち帰らないしなしなのフランスパン。

『ダージリン急行』なら
不細工な黒縁眼鏡のライム娘。
クレイジーに付き合って、ハイサヨナラ。

『さくらん』に倣えば、
わたしも見に行ってこよう。
町人の格好をして
どんな鬼か見てこよう。


2008.

「香水瓶を砕いた」

和紙に馴染んだ香水も

和紙に空気に消えてゆく


必死で吸い込んでも


でも憶えたよ
街で逢っても振り向ける




2008.

「小さい花」

あんたなにをしているの

出ちゃったね

待ってたものが遂にきちゃったね

よかったね

あんた無償の愛もてるの

そんな生活耐えられるの

背負いきれるの


でも観てしまったね

気づいてしまったね


あんた
どうするの



2008.

「大浴場」

風呂屋の鏡で図らず自分を見る

目が合う

うつむき、目を瞑っている

顔を洗いながら
髪を洗いながら

目を瞑って
力なく首を振る

座っているのに
ひざまづきそう

それでまた首を横に振る

目を瞑ったまま



2008.

「花浴 かよく」

花浴

心遣い浴

昔話浴

もう一度
心遣い浴

心遣い浴


94歳の強欲もいるのですよ

例えお金持ちでもひとに優しくできない慕われない人生もあります


あなたは？



2008.

「雫」

その小さいピンクのヘルメットにも

そのブラウンのトレーナーにも

その座ってるおじさんの眼鏡にも

そのあなたの長い脚にも

しずくは降るよ

犬のお人形貸してあげるね


2008.

「”その体験”」

その体験で、
”原点”には還れないけれど
”根元”には触れられる気がする

”畏怖の念”というとオーバーか？

でもそれぐらいドデカイ
人間が人間であるかなしみとよろこびが
一気によぎる


2008.

「音速パンチ」

『音速パンチ』はCoccoの歌ですが。

これで誰の目を意識することなく
勝負パンツを履ける




2008.

「抱っこ」

此処へ来て3ヶ月の重み
此処へ来て4年と3ヶ月半の重み

ほんの数秒間

緊張から、
首と肩甲骨と上腕部と手首の筋が痛い


すごいな
すごいな

軽かったけど重かった
重かったけど柔らかくて軽かった
そして温かかった


ひとの身体は温かいんだ


2008.